気候変動防止モデルマスタープラン 骨子

気候変動防止モデルマスタープランは、下記の目的で2016年度から作成を開始しており、環境首都創造ネットワーク会員自治体等にも協力を求め2018年度の完成する予定です。本骨子はその2016年度において実施した調査、研究、検討の成果をもとに気候変動防止モデルマスタープランの概要を示すものです。この骨子をもとに調査、研究、検討を更に重ね、2017年度は自治体に協力を求めて肉付けした案を作成する予定です。

Ⅰ モデルマスタープランの目的、活用、性格

1 目的

「パリ協定」の発効を受けて、今世紀末の気温上昇を1.5℃未満に抑えることに地域社会から率先的に取り組むとともに、持続可能な社会構築と生活の質の向上をめざす総合的なまちづくりを実現するモデルとなる計画を、NGO、自治体、専門家が協働で構築し、日本社会に提案、具体化する。

2 活用

モデルマスタープランは、各地の市区町村における下記の計画の策定、改定時に活用し、その計画に本プランの目的、内容が適確に内包されることを期待するものである。
ア 独自の気候変動防止マスタープランの策定
イ 地球温暖化対策実行計画区域施策編の大幅改定または策定
ウ 総合計画の大幅改定または策定
エ ローカルアジェンダ21の策定または大幅改定
オ 環境基本計画の大幅改定
カ 上記計画を隣接する、もしくは流域の複数の市区町村で実質的に共通のものとしての策定

3 性格

全国の市区町村で上記の計画策定及び大幅改定の共通モデルでありながら、地域特性化できるものとする。また行政計画にとどまらない住民、企業セクターも含めた社会計画をめざす。

Ⅱモデルマスタープランの内容骨子

1 将来像

パリ協定が目指す社会、持続可能で豊かな社会の姿を、日本の地域社会がその特性に応じて描く。中期的な目標である2030年(前後)はでき得る限り具体的に、長期的な2050年は多様な指標にもとづいた目標を設定する。

ア ビジョン・2030

2030年のめざすべき地域の将来像を具体的に記述する。
具体的に将来像をいくつかのパートに分けて記述する場合の区分例
(1)  暮らし、消費行動、住宅、コミュニティ、学習、休養などの将来像
(2)まち  交通、建物、商店街、土地利用、緑地、公園、道、景観、防災などの将来像
(3)しごと  環境を大切にした商工観光業、伝統産業、雇用などの将来像
(4)森・里・海・湖・川  自然の状況、自然と人 環境を大切にした農林水産観光業などの将来像
(5)定量的将来像 これらにプラスして目標値・指標

イ ビジョン・2030を描くための手法例

(1)パリ協定を実体化するため、2030年の温室効果ガス排出量削減量からみた必要な社会変革
(2)「2030年の私」 住民・職員参画で、2030年にどのような暮らしが可能か、具体的で多様な状況設定をしてグループディスカッションで描く
(3)SDGsの地域実体化 SDGsの17の目標169のターゲットを地域の状況にあわせて取り組んだときに、どのような社会が考えられるのかを、職員・住民参画で描く

ウ ビジョン・2050

二酸化炭素排出量を90年比80%以上削減した社会像を描くための指標、目標を提示する

2 目標値・指標

ビジョンと連携して地域の持続可能性指標を多角的に設定する。目標は中期と長期の2段階で設定する

【目標値・指標の例】

ア 環境目標・指標(例)

温室効果ガス削減率(排出量 地域全体だけでなく個別目標も)パリ協定の目標との整合
再生可能エネルギーの地域創出量(自立度)、利用率、他地域との共同による創出量
公共交通の利用機会率、利用者数
EV、FCV、PHV率 一定以上の低燃費車率
自転車道延長距離 歩行者専用道延長距離
廃棄物処理量(削減率)
ゼロエネルギーハウス、低エネルギー消費(高断熱)住宅、建築物率(戸数)
環境保全型農業が実施されている農地面積
放置されていない自然林(二次林)の面積、管理された人口林面積、環境認証森林面積
近自然改修された河岸、湖岸、海岸の延長距離、自然河岸、湖岸、海岸率

イ 経済目標・指標(例)

雇用率(失業率)
環境調和型産業での雇用者数、出荷額
地域内資金循環額、域外への資金流出率
貧困率

ウ 社会目標・指標(例)

可処分時間(自らの意思で人と人とのつながる時間、人と地域の自然とのつながる時間)量
生涯学習に参加する時間量、人数
NPO、社会的企業数及びそこに携わる、参加する人数
フェアトレード商品、エシカル商品、環境適応商品購入額(率)
発展途上国の地域社会との交流プログラム、交流者数
熱中症、熱帯性・亜熱帯性感染症発生数
自然災害による被害額
ボランティア、NPO、住民自治組織等の活動人口

3. 現状把握と将来予測

2の目標値・指標で設定した項目の数量的な現状把握と将来予測を可能な限り実施する。

【活用できる分析手法、将来予測手法、情報事例】
(1)環境省「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定支援サイト
(2)まち・ひと・しごと創生本部「地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」サイト
(3)「未来シミュレーター」とそれを基にした「未来カルテ」 OPOSSUM。地域の資本基盤ストックの未来予測ができる。
(4)エネルギーのバリューチェーン分析(地域経済付加価値モデル)立命館大学 ラウパッハ・スミヤ ヨーク教授
また、水俣市で実施された地域経済循環分析、新城市が独自に開発運用しているエネルギー消費量及びCO2排出量の把握ソフト、東近江市の将来像の定量推計数理モデル等が参考になる

4.プロジェクト・重点政策

ア プロジェクト・重点政策の基本的な考え方

(1)将来像と現在の状況をつなぐ、バックキャストでプロジェクト・重点政策を組み立てる
(2)持続可能で豊かなまちづくりをめざす中で、気候変動防止・脱炭素社会の構築を横断的に貫く
(3)単一目的の施策ではなく「環境」「社会」「経済」の統合性のあるプロジェクト・重点政策を優先する
(4)住民参画・協働と行政の責任ある率先性を実施の基盤にする(プロジェクトには全て住民と行政の協働度、率先度を明記する)
(5)自主努力ではなく社会的な仕組みとして温室効果ガスの削減を可能とするプロジェクト・重点政策
(6)羅列ではなく具体的かつ戦略的に構築する。重要度や取り組み時期・期間を設計しロードマップを描く
(7)意識・価値観のパラダイムシフトと社会の仕組みのトランスフォーミング(大改革)をすすめる
(8)新たな財源として地方炭素税などのカーボンプライシング、地域基金、再生可能エネルギーを検討する

イ プロジェクト・重点政策の方向性

(1)環境保全、温室効果ガスの削減と地域経済の活性化、雇用の促進、地域内資金循環と結びついたプロジェクト・重点政策
(2)環境保全、温室効果ガスの削減と人権、社会的弱者の擁護、社会的格差の解消と結びついたプロジェクト・重点政策
(3)持続可能性を高める方向としてSDGsの地域具体化をめざすプロジェクト・重点政策
(4)エネルギーの地域自立(他地域との共同を含む)を具体化するプロジェクト・重点政策
(5)住民、事業者、行政の課題解決能力の増大(エンパワーメント)と、取り組む団体間の関係の良化及び深化をすすめるプロジェクト・重点政策
(6)1自治体だけでなく周囲、流域の自治体と連携した重点施策・プロジェクト
(7)発展途上国の地域社会との連携した重点施策・プロジェクト

ウ プロジェクト・重点政策を構築するための情報

プロジェクト・重点政策を考案、構築するための参考情報としては、下記のものなどがある。
(1)環境首都創造ネットワークで作成したエネルギーを中心とした「政策・活動パッケージ」の「モジュール」
(2)環境首都創造NGO全国ネットワークが2017年度から実施する「自治体政策評価オリンピック」の「先進事例」
(3)環境首都コンテストの先進事例から今後も活用可能なものとして抽出した「環境自治体ベストプラクティス集
(4)「環境自治体白書」(編著:中口毅博 編集協力:環境自治体会議環境政策研究所 生活社)
(5)環境首都創造フォーラム」「環境首都創造セミナー・共同研修」(主催: 環境首都創造ネットワーク、環境首都創造NGO全国ネットワーク等)での発表、ディスカッション
(6)環境自治体会議の全国大会等での発表、ディスカッション
(7)環境省「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定支援サイト

5. 推進体制 実行・評価・見直し

(1)本格的な協働型推進組織の設置・運営を含めた住民参画がシステムとしても明確に入れる
(2)協働型推進組織と並行して共同する行政内の部局横断型推進組織を設置
(3)毎年度の実行計画の策定 予算及びプロジェクトごとの担当課と共同する課の明記。住民参画度の明記
(4)目標への達成度、プロジェクト・重点政策の実施度、成果等を住民参画で評価する
(5)予算策定過程において、本プランに位置付けられるプロジェクト・重点政策を優先的に採択するシステムの導入
(6)環境首都創造ネットワーク、環境自治体会議を活用した他の自治体との連携と切磋琢磨を図る。「環境首都創造フォーラム」「自治体政策評価オリンピック」「環境自治体会議」への参加
(7)総合計画や自治体の他計画の改訂、策定時に目標、将来像、施策・活動で整合を求める必要がある
(8)国のパリ協定を具体化する諸政策、低炭素ビジョン、地球温暖化対策実行計画等の活用を図る
(9)自治体内の地域ごとのビジョンとプロジェクトの必要性の検討

PDFは以下より。
気候変動防止モデルマスタープラン 骨子(PDF)

独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて製作しました
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