第8回の結果概要

1. コンテストの趣旨

21世紀、私たち人類社会が抱える最大の課題は持続可能な社会を築いていくことです。しかし、例えば地球温暖化は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル:2007ノーベル平和賞受賞団体)の第4次評価報告書でも明記されているように、より大きな現実的な脅威となっています。さらに経済的にも、社会的公正においても人類社会は大きな問題に直面しています。このような問題を乗り越え、持続可能な社会を築くためには人類として大きな文明、社会の変革が必要です。

1992年に、ブラジルで開催された国連の「環境と開発に関する会議(リオサミット)」において宣言されたアジェンダ21(21世紀の課題)には、持続可能な社会を築く主役が世界の自治体であることが明白に謳われています。持続可能な社会づくりという人類共通の目標を着実に達成していくには、各地域における確固とした取り組みを地球規模へと広げていくことが求められているのです。

そのために自治体は、地域の特色を生かしながら、創造的かつ多種多様な施策・事業を戦略的に展開していく必要があります。

そして、その過程には住民の主体的な参画によるパートナーシップが不可欠となっています。私たち全国各地で活動するNGOがこの「全国環境首都コンテスト」を継続して実施する目的は、そのような持続可能な社会を住民参画のもと、地域から創造していく自治体の取り組みを支持・支援し、加速化させることにあります。

2. 環境首都コンテストの目的

環境首都コンテストの目的を簡潔にまとめると、次のようになります。

  1. 自治体間に切磋琢磨する仕組みをつくることにより、自治体の環境施策の総合的な推進を加速化し、「日本のフライブルク」と呼ぶことができるような自治体を創出する。そして国内に具体的な目標になる自治体が出現することにより、全国の自治体に波及的な環境自治体創出効果を生み出す。
  2. 参加自治体が他の自治体との比較検討により、自己の施策の取り組み状況を総合的に比較し、評価、見直しに用いることができる。
  3. 政策提案でもある質問の回答内容に関する情報提供と、先進事例の掘り起こしと紹介により、環境施策の推進と、自治体間の交流を促す。
  4. 優れた取り組みを実施している自治体を環境NGOが評価することを通して、地域社会、行政機関・議会などの環境行政への関心と評価を高め、さらなる環境施策推進の活力を生み出す。
  5. コンテストの実施主体である環境NGOによる調査・ヒアリング・分析・評価作業などを通して、行政と住民やNGOの具体的な対話を促し、自治体の総合的な環境施策を推進する。

3. コンテストの実施方法

●10年間継続実施

本コンテストはその目的から継続的に実施することが必要です。2001年から10年間にわたり毎年1回実施中です。

●質問票に回答、綿密なヒアリング

本コンテストは、主催者である環境首都コンテスト全国ネットワークが作成した質問票に自治体が回答するとともに、回答内容を表す資料をつけて提出いただきます。回答内容の精査を行い、すべての自治体に電話およびメールでの確認、さらに半数以上の自治体には訪問ヒアリングを行った上で、回答を修正確定します。その回答を独自の採点基準に基づいて、専門知識、経験を有した本ネットワークメンバーが採点します。

●質問分野・配点

質問項目は、環境首都をめざす自治体が取り組むべき施策分野を全15分野に分けて尋ねています。質問数は、全 79問?81問(産業の回答選択ですこし幅があります)。内容は、狭い意味の環境問題ではなく、持続可能な地域社会を築くための施策を、環境を中心に幅広く質問にしています。

15分野の質問+自由記述で1000点、先進事例加点が20点 合計1020点満点です。

A ローカルアジェンダ21・環境基本条例・環境基本計画(配点95)

B 環境マネジメントシステム(配点50)

C 住民とともにチェックする仕組み・情報公開(配点45)

D 自治体内部における環境基本行動(配点45)

E 自治体との交流(配点40)

F 職員の資質・政策能力の向上、総合的な行政推進と予算編成(配点75)

G 住民のエンパワーメントとパートナーシップ(配点85)

H 環境学習(配点85)

I 自然環境の保全と回復(配点70)

J 健全な水循環(配点40)

K 風土を活かした風景づくり(配点55)

L 持続可能なまちづくりと一体化した交通政策(配点80)

M 地球温暖化防止・エネルギー政策(配点85)

N ごみの減量化(配点60)

O 環境に配慮した産業の推進(配点60)

自由記述(配点30)

先進事例加点(最高20点)

●表彰

優秀な成績を修められた自治体等に対し、次のような表彰を実施しています(詳しくは「5. 入賞自治体・表彰自治体」参照)。

総得点上位表彰、人口規模別得点による表彰、人口規模群別「地球温暖化防止」「住民参画」部門表彰、先進事例特別表彰、質問分野別表彰、奨励賞

4. 自治体参加状況

今回の参加自治体数は67自治体となりました。以下その一覧です。

第1群 人口2万人未満(5自治体)

自治体名 人口(人) 過去の参加実績 合併の有無(参加申込時)
1 2 3 4 5 6 7
池田町(福井県) 3,410
梼原町(高知県) 4,032
浜中町(北海道) 6,841
遊佐町(山形県) 16,557
内子町(愛媛県) 19,536 内子町、五十崎町、小田町(2004)

第2群 人口2万人以上、5万人未満(13自治体)

自治体名 人口(人) 過去の参加実績 合併の有無(参加申込時)
1 2 3 4 5 6 7
高畠町(山形県) 26,148
箕輪町(長野県) 26,572
勝山市(福井県) 26,941
水俣市(熊本県) 28,518
島本町(大阪府) 29,596
本宮市(福島県) 31,720 本宮町、白沢村(2006)
香南市(高知県) 34,052 野市町・香我美町・夜須町・赤岡町・吉川村(2005)
四万十市(高知県) 36,833 中村市、西土佐村(2005)
山梨市(山梨県) 38,763 山梨市・牧丘町・三富村(2004)
小諸市(長野県) 45,148
長久手町(愛知県) 47,677
加西市(兵庫県) 49,385
北杜市(山梨県) 49,538 明野村・須玉町・高根町・長坂町・大泉村・白州町・武川村(2004)、北杜市・小淵沢町(2005)

第3群 人口5万人以上、10万人未満(17自治体)

自治体名 人口(人) 過去の参加実績 合併の有無(参加申込時)
1 2 3 4 5 6 7
野洲市(滋賀県) 50,409 野洲中主町、野洲町(2004)
新城市(愛知県) 51,628 新城市、鳳来町、作手村(2005)
能代市(秋田県) 61,986 能代市、二ツ井町(2005)
京丹後市(京都府) 62,623
千曲市(長野県) 63,021 更埴市、戸倉町、上山田町(2003)
日向市(宮崎県) 64,462 日向市、東郷町(2005)
北本市(埼玉県) 70,667
碧南市(愛知県) 74,231
交野市(大阪府) 79,107
長岡京市(京都府) 79,371
日進市(愛知県) 79,920
綾瀬市(神奈川県) 82,292
福知山市(京都府) 82,565 福知山市・三和町・夜久野町・大江町(2005)
長浜市(滋賀県) 82,675 長浜市・浅井町・びわ町(2005)
越前市(福井県) 83,735 武生市、今立町(2005)
東松山市(埼玉県) 88,133
甲賀市(滋賀県) 95,956 信楽町・水口町・甲賀町・土山町・甲南町(2004)

第4群 人口10万人以上、30万人未満(23自治体)

自治体名 人口(人) 過去の参加実績 合併の有無(参加申込時)
1 2 3 4 5 6 7
飯田市(長野県) 106,483 飯田市(2005)、上村(2005)、南信濃村(2005)
多治見市(岐阜県) 117,431 多治見市、笠原町(2005)
生駒市(奈良県) 118,293
掛川市(静岡県) 121,165 掛川市・大東町・大須賀町(2005)
会津若松市(福島県) 128,591 会津若松市・北会津村(2004)、会津若松市・河東町(2005)
桑名市(三重県) 142,282 桑名市、多度町、長島町(2004)
土浦市(茨城県) 142,872 土浦市、新治村(2005)
周南市(山口県) 152,914 徳山市、新南陽市、熊毛郡熊毛町、都濃郡鹿野町(2003)
豊川市(愛知県) 158,695 一宮町(2005)、豊川市・音羽町、御津町(2007)
宇部市(山口県) 176,199 宇部市、楠町(2004)
日野市(東京都) 176,538
立川市(東京都) 177,132
磐田市(静岡県) 177,249 磐田市、福田町、豊田町、竜洋町、豊岡村(2005)
安城市(愛知県) 179,355
鳥取市(鳥取県) 197,054 鳥取市、国府町、福部村、河原町、用瀬町、佐治村、気高町、鹿野町、青谷町(2004)
荒川区(東京都) 199,271
調布市(東京都) 218,413
宝塚市(兵庫県) 223,044
松本市(長野県) 228,389 松本市・四賀村、安曇村、奈川村、梓川村(2005)
佐賀市(佐賀県) 237,371 佐賀郡諸富町・大和町・富士町・三瀬村(2005)、佐賀市・佐賀郡川副町・東与賀町・久保田町(2007)
八尾市(大阪府) 272,940
長岡市(新潟県) 280,625 長岡市・中ノ島町、越路町、三島町、山古志村、小国町(2005(2005.4))、長岡市・栃尾市、与板町、和島村、寺泊町(2005(2006.1))
明石市(兵庫県) 292,226

第5群 政令指定都市を除く30万人以上(9自治体)

自治体名 人口(人) 過去の参加実績 合併の有無(参加申込時)
1 2 3 4 5 6 7
いわき市(福島県) 347,803
吹田市(大阪府) 352,626
長野市(長野県) 382,139 長野市・豊野町、戸隠村、鬼無里村、大岡村(2004)
長崎市(長崎県) 451,270 長崎市、香焼町、伊王島町、高島町、野母崎町、三和町、外海町(2004)、長崎市、琴海町(2005)
尼崎市(兵庫県) 461,650
福山市(広島県) 464,100 福山市・内海町,新市町(2002)、福山市・沼隈町(2004)、福山市・神辺町(2005)
倉敷市(岡山県) 479,278 倉敷市・真備町・船穂町(2005)
板橋区(東京都) 533,168
熊本市(熊本県) 461,650 熊本市・冨合町(2008)

●参加自治体総数の変化

今回の参加自治体中、昨年から継続して参加された自治体は45、初参加は13自治体(昨年9自治体)となりました。また、過去参加実績はあるが、前回参加をせず、今回復活して参加した自治体は7自治体ありました。新規、復活参加数が伸びた要因は、未参加自治体や過去参加自治体への参加呼びかけを積極的に行ったことと、環境問題に対する自治体の意識の高まり、本コンテストの社会的認知の高まりにあると考えられます。

参加自治体数は、第1回が93、第2回が115、第3回が83、第4回が75、第5回が75、第6回が74、第7回が66と、減少傾向にありましたが、今回下げ止まりました。参加率(参加市区町村/総市区町村)は、合併による総数の減少と相まって、3.75%に上昇しました(下図・表参照)。

実際は70以上の自治体から申込があったのですが、回答提出をあきらめ、参加とならなかった自治体も残念ながらありました。これは質問票への回答時期が、行政の議会や予算編成時期、市民向けイベント等と重なり、回答とりまとめ担当者の作業がすすまないことが例年課題となっていると考えられます。

年度 総自治体数A 参加自治体数B %(B/A)
2001年度
3,223
93
2.88
11月15日現在
2002年度
3,217
115
3.57
11月1日現在
2003年度
3,179
83
2.61
11月15日現在
2004年度
2,942
75
2.54
11月1日現在
2005年度
2,170
75
3.45
11月1日現在
2006年度
1,817
74
4.07
10月1日現在
2007年度
1,800
60
3.66
10月1日現在
2008年度
1,786
67
3.75
10月6日現在

総務省ウェブサイト(http://www.soumu.go.jp/gapei/ )より作成

●参加自治体の特徴(地域別)

沖縄を除く各地域からの参加がありました。割合としては例年、中部、近畿地方からの参加が多くなっています。一方で、茨城県、鳥取県、奈良県などからはコンテスト始まって以来初めて参加があるなど、参加自治体の都道府県も多様になり、昨年の28都府県が31都道府県に増えました。これは、前都道府県へ本コンテストへの広報協力を打診し、積極的にご協力いただいた効果が現れています。また、政府の環境モデル都市に立候補した意欲の高い自治体に対して熱心に誘いかけをしたことも効果を上げました。

●参加自治体の特徴(人口規模別)

過去7回を平均すると、第3、4郡(人口5万以上?30万未満)の中規模自治体が約55%を占めています。今回は、その傾向はさらに顕著になり59%を占めました。一方で人口5万未満の小規模自治体の参加は平均とほぼ同じ2割半にとどまっています。第5群および第6群(政令指定都市)の大規模自治体は13%と過去最低となりました。大都市の社会的影響とその責任を考えれば、より積極的な参加を求めたいと考えます。

5. 入賞自治体・表彰自治体

●表彰の種類

(1)総合得点による表彰

1020点満点中、総得点上位10位以内を表彰します。

(2)人口規模別得点による表彰

総合順位のうち、人口規模ごとに上位2自治体を表彰します。

(ただし、人口規模別の表彰は、ひとつの群が4自治体以上である場合のみ行い、ひとつの群が20自治体以上であれば、上位3位まで表彰します)

第1群 人口2万人未満
第2群 人口2万人以上、5万人未満
第3群 人口5万人以上、10万人未満
第4群 人口10万人以上、30万人未満
第5群 政令指定都市を除く人口30万人以上
第6群 政令指定都市

(3)部門別表彰

持続可能な地域社会を創る上で特に重要と考えられる「地球温暖化防止」と「住民参画」の2部門で人口規模群別に表彰します。

これら2つの部門に関する取り組み内容は、本コンテストの質問全般に関わっています。そこで、これらの要素が含まれる選択肢をそれぞれ抽出し、それらの選択肢への得点を積算した結果、群ごとに1位を表彰しています。
(ただしひとつの群が4自治体以上である場合のみ行います)

(4)先進事例特別表彰

コンテストの質問票への回答および自治体へのヒアリングをとおして、「環境首都コンテスト全国ネットワーク」の構成員からなる委員会で選考した「先進事例」の中から、評価が高かった事例に対して、特別表彰を行っています。

(5)奨励賞

本コンテストは、継続的に参加することに意義があると考えています。そこで第4回?第8回まで5回連続で参加していただいた自治体を奨励したいと考えて設けた表彰です(前回、前々回奨励賞を受賞した自治体を除く)。

(6)質問分野別表彰

質問を構成する15分野(A?O)ごとに得点の最も高い自治体を表彰するため、第6回から設けました。

●『日本の環境首都』の称号

このコンテストで優秀な成績に輝いた自治体には私たち主催団体から『日本の環境首都』の称号を贈りたいと考えています。今回のコンテストで事前に定めていた条件は以下のとおりでした。残念ながら、今回このような条件をクリアーされた自治体はありませんでしたので、次回以降への持ち越しになりました。

環境首都コンテスト(第8回) 『日本の環境首都』の条件

  1. 総合で第1位であること
  2. 総合点が満点の70%以上であること(714点以上/1020点満点)
  3. 15分野中、3項目以上が満点の90%以上の点数を得ていること
  4. 15分野中、満点の50%以下の点数の項目が3項目以下であるこ

 

●表彰自治体一覧

今回の表彰対象自治体は以下のようになりました。

●総合順位

順位 自治体名 人口
第1位 水俣市(熊本県) 28,518
第2位 長野市(長野県) 382,139
第3位 飯田市(長野県) 106,483
第4位 安城市(愛知県) 179,355
第5位 新城市(愛知県) 51,628
第6位 宇部市(山口県) 176,199
第7位 尼崎市(兵庫県) 461,650
第8位 熊本市(熊本県) 670,179
第9位 板橋区(東京都) 533,168
第10位 多治見市(岐阜県) 117,431

●部門別表彰

地球温暖化防止部門

○第1群(人口2万人未満)

第1位 池田町(福井県)

○第2群(人口2万人以上、5万人未満)

第1位 水俣市(熊本県)

○第3群(人口5万人以上、10万人未満)

第1位 新城市(愛知県)

○第4群(人口10万人以上、30万人未満)

第1位 安城市(愛知県)

○第5群(政令指定都市を除く、人口30万人以上)

第1位 長野市(長野県)

住民参画部門

○第1群(人口2万人未満)

第1位 遊佐町(山形県)・池田町(福井県)同点1位

○第2群(人口2万人以上、5万人未満)

第1位 水俣市(熊本県)

○第3群(人口5万人以上、10万人未満)

第1位 新城市(愛知県)

○第4群(人口10万人以上、30万人未満)

第1位 飯田市(長野県)

○第5群(政令指定都市を除く、人口30万人以上)

第1位 長野市(長野県)

●人口規模別順位

○第1群(人口2万人未満)

第1位 遊佐町(山形県)
第2位 池田町(福井県)

○第2群(人口2万人以上、5万人未満)

第1位 水俣市 (熊本県)
第2位 高畠町 (山形県)

○第3群(人口5万人以上、10万人未満)

第1位 新城市 (愛知県)
第2位 千曲市 (長野県)

○第4群(人口10万人以上、30万人未満)

第1位 飯田市 (長野県)
第2位 安城市 (愛知県)
第3位 宇部市 (山口県)

○第5群(政令指定都市を除く、人口30万人以上)

第1位 長野市 (長野県)
第2位 尼崎市 (兵庫県)

※第4群は20自治体以上の参加のため、上位3位までの表彰となります。

●奨励賞

能代市(秋田県) 第3群
遊佐町(山形県) 第1群
磐田市(静岡県) 第4群
豊川市(愛知県)
周南市(山口県)

※第4回から第8回まで連続参加された自治体のうち、昨年奨励賞を受賞していない自治体のみ表彰します。

●質問分野別表彰

自治体名 得点/配点 得点率(%)
A 日進市(愛知県)
水俣市(熊本県)
73/95 76.8
B 水俣市(熊本県) 44/50 88.0
C 安城市(愛知県) 39/45 86.7
D 水俣市(熊本県) 38/45 84.4
E 水俣市(熊本県) 35/40 87.5
F 安城市(愛知県) 63/75 84.0
G 水俣市(熊本県) 58/85 68.2
H 水俣市(熊本県) 58/85 68.2
I 板橋区(東京都) 53/70 75.7
J 熊本市(熊本県) 33/40 82.5
K 長野市(長野県) 47/55 85.5
L 水俣市(熊本県) 69/80 86.3
M 宇部市(山口県) 62/85 72.9
N 水俣市(熊本県) 37/60 61.7
O 水俣市(熊本県) 56/60 93.3

6. 第8回の総括

●第3期の環境首都コンテスト 質問、評価をさらに効果、内容の重視に

本コンテストの質問は、自治体の施策、制度の有無だけでなく、その内容と効果の重視、市民参画やパートナーシップによる施策推進等の要素の組み込み等を評価するものにしています。そして、10年間を3期に分けて質問構成と配点を見直し、さらに毎年徐々に進化・深化させています。

第1期(第1回?第3回)は施策、制度、計画、活動のあるなしを中心に、その内容と効果、住民参加の状況を加味した質問、採点構成としました。

第2期(第4回?第6回)は施策、制度、計画、活動のあるなしとともに、その内容と効果、住民参加の状況をより重みをもった構成としました。

昨年度からの第3期(第7回?第10回)は、施策、制度、計画、活動のあるなしを基盤として、その内容と効果、住民参加の状況をさらに重みをもった構成としました。この第3期の構成が、私たち主催者が狙った、日本の環境首都コンテストの質問票、本来の姿ということができます。ただ、このように3期構成としたのは、環境首都コンテストの趣旨に基づき、日本の自治体全体の環境問題、持続可能な社会構築への取り組み状況を斟酌したためです。さらに第8回からは地球温暖化への対応をより強く求め、「L持続可能なまちづくりと一体化した交通政策」「M地球温暖化防止・エネルギー政策」分野の配点比重を重くしました。

第2期である第4回?第6回の結果をみますと、その中で毎年、質問を少しずつ深化させているにもかかわらず、総合10位までの平均点が、459点、505点、578点へと大きく上昇しました。また、全自治体の平均点も245点、273そして294点へと上昇しました(参加自治体の入れ替わりがあるので厳密な比較はできませんが、傾向は見ることができます)。このことから、参加自治体の取り組みがかなりの勢いで進んでいることがわかります。

第3期に入った7回、8回は、上述した質問内容、配点の大きな見直しから、総合10位までの平均点、全自治体平均点とも若干減少しました。ただ、これは、各参加自治体の取り組みが低下したからでは決してありません。むしろ、かなりの取り組み強化を続けておられる自治体が多いからこそ、得点の減少度があまりなかったと私たちは評価しています。今後、第9回?第10回にかけて、上記の第2期と同様に得点の伸びも期待できると思います。その中で、日本の環境首都が複数誕生することを私たちも心から願っています。

●第1位 水俣市

今回、総合第1位は第4回、第5回にも第1位になった水俣市が輝きました。3回目の第1位を獲得したことは、水俣市が日本の環境首都、世界の環境モデル都市を目指して取り組みを年々進められている証であり、その栄誉を称えたいと思います。水俣市は、総得点726点を獲得しています。そして、すべての分野で50%以上、中でも「O環境に配慮した産業の推進」で9割以上を獲得、他に4項目で8割以上の得点となっています。また、「Aローカルアジェンダ21・環境基本条例・環境基本計画」「B環境マネジメントシステム」「D自治体内部における環境基本行動」「E自治体との交流」「G住民のエンパワーメントとパートナーシップ」「H環境学習」「L持続可能なまちづくりと一体化した交通政策」「Nごみの減量化」「O環境に配慮した産業の推進」で分野別全国第1位になりました。このように「環境首都」にかなり近い存在であると考えられます。

●自治体の目標となり、施策展開に大きな役割を果たしているコンテスト

これまで8回の実施を経て、自治体環境政策に具体的影響がはっきりと現れてきています。例えば水俣市は新しく改定した第2次環境基本計画で「環境首都まちづくりへの挑戦」を掲げ、市民参画の組織と庁内組織を立ち上げ、プロジェクトに乗り出しています。安城市は総合計画の目標として環境首都を掲げ環境のまちづくり専任副市長を置いています。飯田市は、市長が環境首都をめざすことを明言され「挑戦環境首都への道」というセミナーを3回にわたって新城市長、安城市副市長、多治見市長を招いて開催しました。

また、福知山市、磐田市では、本コンテストの順位環境基本計画実行の指標として、を規定しています。このように、「環境首都」を地域社会の目標として、またコンテストを自治体の政策評価の有効な道具として用いられるようになりました。さらに多くの自治体が、本コンテストの結果を分析し、取り組みの弱かった施策を見直したり、相互訪問したり、先進事例集を参考により優れた施策を組み立てられています。

●続々現れる先進事例

今年も先進事例として69事例を紹介することができました。この先進事例には人口規模、自然条件、社会条件が多様な自治体から、地域特性を生かした事例、ユニークな着想がある事例、すばらしい成果をあげている事例を載せています。このような先進的な取り組みが日本社会を変えていく大きな力になるでしょう。地球温暖化の現状や将来予測をもちだすまでもなく、持続可能で豊かな地域社会を築いていくことは、私たち現代を生きる人間の責務となっています。環境首都を日本で実現していくことは、その大きな力となりえると確信しています。

7. 先進事例一覧

本コンテストにおいて先進事例とは、市民の立場から見て、持続可能な地域社会を形成していくための課題解決のため多くの自治体の参考になる取り組みおよびと本ネットワークが独自に選定した参加自治体の取り組みです。その中でも、私たちが特に高く評価するものについて、今後の当該取り組みの展開への激励の思いも込めて先進事例特別表彰をしています。

自治体名 事例名
浜中町(北海道) 取水堰への魚道設置★
浜中町(北海道) 緑の回廊で農村地域全域ビオトープ化へ★
浜中町(北海道) レジ袋有料化の取り組み
浜中町(北海道) 市民・事業者と協働で牧場景観を復元
能代市(秋田県) バイオマスのまちづくり★
高畠町(山形県) 環境学習★
遊佐町(山形県) 飼料用米プロジェクト★
遊佐町(山形県) 課長さんが窓口業務の応対をする遊佐町★
遊佐町(山形県) ゆざまち財政百科
いわき市(福島県) 地域振興担当員制度
いわき市(福島県) 大学等と地域の連携モデル創造事業
いわき市(福島県) 環境基本計画改定に向けての首都コン参加
土浦市(茨城県) 地域活性化バス★
東松山市(埼玉県) CO2排出量削減に効果的な用紙使用量の設定
北本市(埼玉県) 北本らしい”顔”の駅前つくりプロジェクト
荒川区(東京都) 区民を巻き込んだ環境交通政策★
板橋区(東京都) 板橋区環境教育カリキュラム=未来科=★
板橋区(東京都) 地下水及び湧水を保全する条例・湧水保全地域の指定
立川市(東京都) 環境に配慮した買い物
調布市(東京都) 未来への希望が持てる社会の実現へ
日野市(東京都) 市民が市民のためにわかりやすくつくった財政白書★
長岡市(新潟県) 他の地域へつなげる、環境に配慮した災害からの復興
勝山市(福井県) えちぜん鉄道活性化の取組★
勝山市(福井県) ヤル気職員支援事業
勝山市(福井県) わがまちげんき発掘事業&創造事業★
越前市(福井県) いつでも利用できる市民活動交流室★
池田町(福井県) 「池田の郷(さと) 水と土を守る会」★
池田町(福井県) 池田町の水を清く守る条例★
池田町(福井県) いけだエコキャンドル★
北杜市(山梨県) 村山六ヶ村堰水力発電所
長野市(長野県) 協働推進員
長野市(長野県) ぼくらのうら山プロジェクト
飯田市(長野県) 市の会議にリターナブル瓶!★
飯田市(長野県) 公共交通利用者の大幅増加★
千曲市(長野県) 棚田のある風土と文化を学ぶ八幡小学校 ★
磐田市(静岡県) カイゼン提案毎年8000件以上
掛川市(静岡県) ごみ減量へ繋がるローラー学習会★
豊川市(愛知県) 市民と行政の協働推進委員会
安城市(愛知県) 広報あんじょう
安城市(愛知県) 職員向け ESD連続ワークショップ★
新城市(愛知県) 市民編集委員がつくる市の広報紙★
新城市(愛知県) ビジョンと戦略のある総合計画 環境首都創造も★
新城市(愛知県) 今ある仕組みを生かした庁内リユースの仕組み
長浜市(滋賀県) 水生生物少年少女調査隊「みずすまし」★
野洲市(滋賀県) 環境基本計画(庁内)実施計画書
長岡京市(京都府) 地産地消の学校給食★
吹田市(大阪府) 都市創造総括監の設置
八尾市(大阪府) 環境配慮の学校園事業
尼崎市(兵庫県) 協働の基本方向策定とその評価の試み「きょうDO検証会議」★
尼崎市(兵庫県) るるぶ尼崎の発行★
加西市(兵庫県) 北条鉄道活性化のとりくみ★
生駒市(奈良県) 市民団体とともに、食器のリユースを展開
生駒市(奈良県) 市民手づくりの環境基本計画中間案発表会?市長も劇に参加
倉敷市(岡山県) CS向上運動
福山市(広島県) 小学校トラベル・フィードバック・プログラム
宇部市(山口県) 事務事業における二酸化炭素排出量を35.8%削減
宇部市(山口県) ecoしてお得!! 省エネ電球への交換キャンペーン
周南市(山口県) 市役所のEMSの取り組みに住民の目を活用
香南市(高知県) 赤岡のまちづくり
梼原町(高知県) “雲の上のまち”ゆすはらのエネルギー自立都市を目指して★
佐賀市(佐賀県) NPOと行政との協働推進窓口制度★
長崎市(長崎県) 小中学生ボランティアリーダー養成★
長崎市(長崎県) 出島・銅座地区まちづくり交付金事業
長崎市(長崎県) 長崎さるく事業★
熊本市(熊本県) 6年間で3900人の子どもが受講?買い物ゲーム★
熊本市(熊本県) 全国初の「水」のご当地検定制度★
熊本市(熊本県) 子ども議会
水俣市(熊本県) 環境首都の実現をめざす新環境基本計画★
水俣市(熊本県) 「海藻の森づくり構想」★

今年も先進事例集に69事例を紹介することができました。そのうち、35事例を特別表彰事例としました。第1回コンテストから今回まで総計534事例を社会に発信することができました。

先進事例は、「環境首都コンテスト全国ネットワーク」の構成員からなる委員会で選考し、掲載するものを決定しております。
また、その中からより評価が高かった約半数の事例に対して、特別表彰を行っております。
上記事例名に★印のついているものは、先進事例特別表彰の対象となった事例です。

※先進事例集への掲載が確定していない事例も含まれます。事例名は、先進事例集掲載の時点で変更される可能性があります。

 

独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて製作しました
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