中国・九州地区環境先進自治体首長サミット(第1回)in宇部 報告


日時:2012年7月24日(火)13:00〜16:00
場所:宇部市ときわ公園内 ときわ湖水ホール

出席者(以下、敬称略)

<出席市長>(敬称略)

水俣市 市長 宮本勝彬
対馬市 市長 財部能成
宇部市 市長 久保田后子
参加市の紹介

(コーディネーター)すぎ本育生(環境首都創造NGO全国ネットワーク 代表幹事)

サミットの概要

中国および九州地区の持続可能な地域社会づくりに意欲を有する自治体の首長が、環境NPOとともに重要な社会的課題を議論し、連携して政策の共同実施や優れた政策を相互交流することにより、各自治体や環境先進自治体の連携体のエンパワーメントを行い、環境を大切にした持続可能で豊かな地域社会の構築を目指すことを目的として、次の2テーマについて自由なディスカッションを行い、最後に3市が共同で取り組むプロジェクトを盛り込んだ共同宣言とそれへの署名を行い、実現を誓い合いました。

ディスカッションのテーマ

【テーマ1】低エネルギー都市実現のための省エネ・創エネ政策(発言録へジャンプ
【テーマ2】生物多様性保全のための戦略的な地域連携保全政策(発言録へジャンプ

以下、ディスカッションの摘録。

開会挨拶
久保田)このサミットの目的は、環境の取り組みを地域で、環境首都をめざす自治体が協力しあってやっていくためのスタートだ。2001年度から2010年度まで「日本の環境首都コンテスト」が開催され、宇部市も参加してきた。その終了後始まった取り組みだ。今回のテーマ、温暖化防止と生物多様性も、宇部市の提案が通って実現したものだ。最後に共同声明を行うことになっているが、内容はまだ決まっていない。今日のディスカッションで「これいいんじゃない?」というものが見つかることを期待したい。宇部市も、公害の克服のために住民参画で、ともに改善していく、ということをやってきた。今日来ていただいている水俣市、対馬市とも、それぞれ地域の特性を活かした取り組みを続けてこられた。いまこそ、自治体がノウハウを持ち寄ることでいいアイデアが生まれるのではないかと考えている。

ディスカッション
すぎ本)今日は3市がともに取り組むものが見つかるように、コーディネーターとしての務めを果たしたい。

財部)環境を市民とともに創りだす時代になった。担っているのは市民で、私はコーディネーターだと思っている。

宮本)市長の前は教員を長くやってきた。山間地に産廃処分場計画が持ち上がり、とにかく阻止せねば、ということで市長になった。

すぎ本)今日は2つのテーマを設定している。ひとつは「低エネルギー都市実現のための省エネ・創エネ政策」、そして2つ目は「生物多様性保全のための戦略的な地域連携保全政策」。後者の方は国際的には議論がなされているが、国内での取り組みははじまったばかり。3市はこれまで取り組みの実績もあり、今後国内をリードしていくという方向でも議論してみたい。
なお、今回のようなサミットは中部地域で中部環境先進5市サミットが先行的に実施されている。環境だけでなく経済・雇用、経済からは派生した社会的不公正など、国内だけでなく世界中で問題になっている。人類の社会のあり方を変えていかないとどうにもならないようになっているのではないか。逆に言えば、我々は新しい社会を創るチャンスでもある。孫子に伝えていける社会をつくらなければならない。これは国際的な課題だが、解決するには現場が大切。日本政府は変わるべきだが、なかなか変わらない。地域から日本を変えていくため、やる気のある地域が連携しながら具体的に取り組んでいく必要がある。我々は、今回のサミットをとおして、そのような動きをつないでいきたいと考えている。
それでは、一つ目のテーマに入っていきたい。

【テーマ1】低エネルギー都市実現のための省エネ・創エネ政策

プレゼンテーション
宮本)水俣市は熊本県の最南端に位置する人口2.7万人の小さなまちだ。八代海に面しているが、市域のほ75%は森林となっている。源流から河口までひとつの水系が市内にあるところがめずらしい。水俣病という世界でも類例のない厳しい公害を経験した。厳しい経験をしっかりと受け止めながら、市民とともに新しいまちをつくっていくことで評価を得たいと考えている。1977年から、汚染された公害防止事業に着手、14年間で485億円の事業費をつぎ込んできた。一度破壊された環境を取り戻すのは非常に難しい。自治体の中に被害者と加害者が同居し、市民の心を引き裂いた悲劇があった。埋立地のエコパークはいまでは様々な施設が立地する緑の公園となった。平成4年、環境モデル都市宣言を行い、環境施策を住民と協働で進めてきた。はじめに取り組んだのはごみ減量。これははもやい直しの機会にもなった。24種類を分別している。中学生が部活動をやめて近所の住民といっしょに汗をがなして分別することでコミュニケーション(ゴミニュケーション)になる、ということも起こっている。この分別が年間2000万円生み出し、1000万円を地域の活動に還元している。ごみの減量はエネルギーの削減につながる。エネルギー需要を抑えることが先決であると考える。
竹の繁茂が問題になっている。大学等と連携してバイオエタノールの開発を行なっている。
太陽光発電の導入を積極的に進めている。環境教育にもつながる効果的な施策である。最近では上水道の水源地にも設置し、災害時の非常用電源にもなる。
市民一人ひとりが再生可能エネルギーに取り組んでもらいたいと、エコハウスにも取り組んでいる。エコハウスは必要最小限のエネルギーですむ住宅であり、要件を満たすものに補助を出している。
第一次産業への再生可能エネルギーの活用では、デコポンやマンゴーの栽培にもできる限り再生可能エネルギーを使用しようと取り組みを進めている。
養殖カキの酸素不足による生産力低下を抑える装置の実証実験を行なっている。
市民の省エネ促進では、自転車共同利用システムのステーションを市内4か所に設置している。電動アシスト自転車を100台配置している。市役所のステーションでは、太陽光発電で充電できるようにしている。自転車購入補助も行なっている。
多様な交通手段の組み合わせによる山間部の移動手段確保や輸送エネルギーの削減にも取り組んでいる。電動バイクや電気自動車、コミバス、乗り合いタクシーなども市が率先して導入を図っている。
小中学校、幼稚園、高校、家庭、旅館/ホテルなどの環境ISOも実施している。
ゼロカーボン産業団地事業に取り組んでいる。再生可能エネルギーで生活できるモデルをつくろうと考えている。
環境金融商品の開発を考えている。環境配慮型の事業を行う事業者に、貸付利子の一部を市が補填する仕組み。市全体を徐々に再生可能エネルギーでまかなえるまちにしていきたい。環境首都みなまたとして取り組んでいく責務があると考えている。

財部)本市は水俣に比べて環境施策への歴史は浅い。「ないものねだりからあるもの探しへ」をベースに行政を進めている。離島としては、格差の是正が表に出がちになる。しかし、そこで生まれたからにはそれでいいじゃないか、もっと足元をみてそこにあるものを資源と捉えて生きていくためにどのように使っていくのかという視点の大切さを市民には伝えてきた。「理想論」といわれる人もいるが、孤高の島をめざしましょう、とひらきなおった島づくりをしている。しかし、市民がかかわらなければ循環は回らないと呼びかけている。本島は709平方キロという馬鹿でかい面積があり、その89%が森林。しかし材木の国際価格が落ち込んでいる。市民の「森離れ」が進み、島に住んでいない地主も増えてきた結果、森が放置されつつある。しかし森林は環境にとってたいへんな資源。対馬市の森林面積は89%で民有林が81%を占める。国有、対馬市有などもある。市有地については今後どう活用していくか市民に問いかけている。森の機能としては水源地、災害防止、エネルギー供給源、生物多様性保全がある。商売として成り立つ場合は雇用の機能、癒しの機能などもある。間伐をしなければ下草も生えず森は死んでしまう。また、間伐してもその残材が問題になっている。昨年12月の議会で森林(もり)づくり条例を制定した。森は個人のものではなく、様々な機能を考えればきちんと作りこむ必要がある。伐採ガイドラインを今年度策定する。個人の山を勝手に切らせないために。対馬にとって森は海を育むもの。また基金を設置した。J-VER制度に登録した。2000tのCO2を売り出す。売れたものを環境につぎ込む。海の環境にも使っていこうという話も出ている。所有権を規制することは難しいので、利用の制限をしていく。それが環境につながればいいじゃないかと考えている。
森の活用としては、木質バイオマスボイラーの公共施設や学校への導入などをしている。その他は他の自治体とあまり変わらない。もっと多くの市民に関わってもらわなければならない。ツシマヤマネコも森が元気でなければならない。彼が生きていけない社会は私たち人間もやっていけない。お互いが生きていける社会づくりが必要。それを基盤として産業、経済、生活があると思っている。

久保田)戦後の経済復興で激甚公害が起こった。花いっぱい活動、その募金の残りで彫刻を購入して飾った。公害克服には文化も大切だという考えがあった。当時の荒廃したまちの再生を望む市民の気持ちがあって、駅前に小さな彫刻を飾ったところから、まちのドラマがはじまった。彫刻のまちづくりは昨年50周年を迎えた。石炭から産業転換をすすめてきた。幾多の苦難を乗り越えて今がある。省エネでは、昨年から「サマーエコライフ-15」を繰り上げてはじめた。実績は-17.3%、193.7千円あまりの電気代も節約できた。エネルギーを創りだすことにも取り組んでいる。
「まちなか避暑地」として、公共施設で涼んでもらい、コミュニケーションも図って欲しいという思いも込められている。子どもが夏休みの宿題もできるように机をおいたり、夏休みの研究にも役立てられたりするようなネタも準備した。
LED照明を5000円以上買った方にはバスカードをプレゼントするという施策も打ち出した。緑のカーテンコンテストでは、山口県から最優秀賞を受賞した。
創エネでは、市民共同発電として、ひろく出資を募って公共施設で発電するという仕組みだが、FITが導入されたことで事業者との連携も視野にいれている。工場跡地へのメガソーラーの誘致もめざしている。誘致にははげしい競争がある。公共の財産である市有地をタダ同然ではだせないので、適正価格を設定した。メガーソーラーの難点は雇用を産まないことだ。初回は誘致できなかったが、あきらめないでがんばりたい。
ときわ公園のエコパーク化については、エコシティ、スマートシティはもちろんめざしているが、まずは身近な公園からエコパーク化していこうという発想でスタートしている。再生可能エネルギーの導入、災害時の避難地としての活用などを計画している。
化石燃料から再生可能エネルギーへ、有限から無限へ。そういうミッションをもってやっていきたい。

ディスカッション
すぎ本)再生可能エネルギーへの各自治体の取り組みには特徴がある。化石燃料では大規模が効率的だった。再生可能エネルギーは、エネルギーを作り出す段階ではCO2を出さないし人間レベルでは無限。しかし地域に巨大なものをポンとつくるわけにはいかないところが弱点でもある。再生可能エネルギーでは日本は資源大国。太陽光、地熱、水力、バイオマスなど。地域の特性を生かさないでお金だけで再生可能エネルギーを拡大するとかえってマイナスになるかもしれない。

久保田)地域どこにでもある再生可能エネルギーだが、だれが投資してはじめるのかが大きな問題。市の税金だけでは無理だし、買い取り制度ができたとしてもすぐに財源ができるわけではない。国の補助金はあるが、なかなか使いにくい。「最初の投資者がだれか」で問題に直面している。

財部)最初に市民に心の持ちようを変えてもらわないとすすまない。市民ファンドなどいろいろな方法があるが、こんな時代はつづかない。心の持ちようは縄文時代に戻らなければならない。そのうえで次に向かわなければいけない。だれが、といわれれば市民が、だ。公共が物を投げ込んでもいいと市民が言うならなんでもできる。その覚悟を市民が持てるのかにかかっている。

宮本)本市は環境に特化したまちづくりをしている。環境では名が売れてきたとは思うが、環境でメシが食えるかいう批判も多い。一番の課題は雇用創出、人口減少の阻止だ。村丸ごと博物館では、なんのへんてつもない村でひとつの経済が起こっている。「ここにはなにもない」と絶対言わないことが約束ということではじまった。村をしっかり歩きまわり、足元をしっかり見つめて、そうすればいままで気づかなかったことが見つかる。それらをなんとか組み合わせていこうという取り組み。人がたくさん来るようになり、「村に化粧」しなければならなくなり、村の住民が学芸員として案内しなければならなくなる。地産地消の食事をごちそうし、野草にも価値を見出していく。いままで4地域を指定している。ここにある真の豊かさとはなにかを我々は考えなければならない時期に来ている。小さな自治体のなかで元気をつくっていき、それが基礎となり、いくつかが集まって源流になっていく。水俣は生命を基盤にしている。考え方を変えていかければならない。

財部)縄文時代といったのは、のびやかさがあるから。弥生土器はシステマティックになる。そこに問題があると思っている。システマティックになっていったがゆえにいまの問題が起きている。だからあえて縄文と言っている。人間性を取り戻し、経済、効率という尺度から離れて行かないと地球はだめになってしまうのではないか。

久保田)自治体としてできる再生可能エネルギーに投資していく必要があるし、これが地域の産業として育まれていく必要がある。何百人の雇用は生まれないかもしれないが、次の時代のものづくりへの問いかけにもなる。次の時代を自分たちの地域でエネルギーを巻かない、それで食べていけるという仕組みを作らなければならない。再生可能エネルギーの買い取り制度によって、20年くらいで投資が見合うものになるが、市民が必要な制度だという意識をもつ必要がる。自らエネルギーを持てるということは安全保障にもつながる。

すぎ本)2つ感じていることがある。なにをもって豊かと感じるかという価値観の尺度がお金に傾きすぎたことでこのような社会になっているのは否めない事実。パラダイムシフトが必要だ。社会的価値観は個人に大きな影響力を持っている、とエーリッヒ・フロムは言う。自分の意見を行っていると思っているが、実はそれが社会の価値観を受けたものであるとうこと。そこを変えていかければならないが、そのためにはどんな社会がいいのか、を言っていくことが大切だ。国政ではどの政党もビジョンが見えない。だから対策になる。さきほどの宮本市長のプレゼンでも将来の水俣のイメージスケッチがあった。スウェーデンでは将来像を先に決めるバックキャスト方式と言われる。対馬市のこういう島にしよう、というのもビジョンであり、それに向かっていくという形だった。将来のために予算をつけるバックキャスト方式は必要だ。

宮本)このイラストは、再生可能エネルギーで地域を賄っていくモデルを絵で表現したものだ。いろんなところで再生可能エネルギーが使われ、自給自足でまかなっていく地域を創りたいということを表している。

すぎ本)スウェーデンでは、「2021年のスウェーデン」というビジョンを描いた。スウェーデンでは環境省を大きくして持続可能発展省にした。限られた自治体の予算をどう使うかには市民の意思が反映する。どういうまちをつくるのか、というまちの将来像を共有していることがとても重要だと思う。

財部)行政職員に勇気を持ってやめてもらいたいことがある。それは予算が前年度を踏襲して今年度の予算があるということ。予算が常に成長ありきで前例踏襲。財務省の様式をそのまま使っているようでは永遠に今を抜け出せない。前年を踏襲しなければ議員に説明しにくいといわれるかもしれないが、今年はここに重点的に投資したいというなら、前例踏襲の予算はやめるべきだ。そうすればやりたい方向が市民に直接に伝わるはず。前年比○%といっていてもよくなるはずがない。些細な事だが、まずはここからはじめなければと思う。

すぎ本)予算はこういうまちにしたいということの表現だ。前年比でやっている限り、縦割りもずっとつづいていく。なにか改革案はないか。

宮本)財政のヒアリングをやると、ぜひこの予算を通したいという気迫が伝わってこない。ぜひやりたい、なんとか通してほしい、という熱意がない。そこをなんとかできればと思う。

久保田)前例踏襲しない、ということはよく理解できる。他部局との連携、民間との連携、予算0事業に力を入れている。職員自体が事業費である。ルーティンワークの中でできないか、民間団体と組むことで通常の活動と民間活動のなかでできないか、そして他部局の事業と連携して予算を出しあってできないか。予算は首長の意思があらわれるもので、創意工夫が問われる。

すぎ本)時代が変わるというときに必要なのは、変わるということをいたるところで具体化していくこと。予算は意外に市民からは遠い存在。市民には自治体の予算に注目してほしい。愛知県新城市では、市会議員にも知らされないような各部局の予算要求の資料まで公開している。予算について解説した冊子を全戸配布している。また、重点を明確にした総合計画をつくり、それに基づいて予算も組む。そして評価も市民参画でやっている。市民にも関心を持ってもらい、再生可能エネルギーを選ぶ、ということを言ってもらってもいいと思う。そこで問題になるのはだれが投資するのか、ということ。外からお金を持っていくるよりは中で作り出したい。エネルギーはこれまでは大電力会社が発電する、というイメージが強い。しかしこれからは宇部のエネルギーはかなりの部分を市内でつくりだしていくことになれば、橋や道路と同じ公共財産だということになる。そうなれば、税金や市民からの投資、地域の金融機関の活用などが考えられる。

財部)本市と宇部市、水俣市と明確に違うこと、それは島であること。エネルギーは独立している。いくらつくっても外に持って行くことはできない。水俣も宇部も全国とつながっている。つくればつくるほど売れる。市民がそういう意思を持てばできることなのになんでしないのか。もったいない、と感じる。

すぎ本)視点を変えればまったく違ったものに見えるということだと思う。

久保田)それで市民共同発電を始めた。再生可能エネルギーのためになんとか協力したいという方への選択肢としての制度。今回の買い取り制度で長期的に見れば元が取れる。ぜひ出資をしていただきたい。

すぎ本)固定価格買取制度は、地域の人が地域に投資してちゃんとしたものをつくれば損をしないということをやっと政府が認めたということだ。ドイツやスウェーデンでは、投資者に制限をかけている。例えば宇部市と宇部市に隣接した地域の住民しか投資できない。このような制限をかけているのは、儲かるから。儲かるなら地域の人に設けさせるべきだという考え方。これまで日本ではGDPが世界で3位にもかかわらず、再生可能エネルギーへの国家予算は世界11位にとどまっていた。しかし技術を持っている。また、再生可能エネルギーは地域に雇用を生む。ドイツでは2020年に自動車関連産業と並ぶ雇用を生むと言われている。ドイツでも自動車関連産業は現在最大の産業。地域のなかでやらないで外に頼っていたら、雇用も全部外に行ってしまう。

宮本)水俣病によって疲弊し、国や県の補助に頼ってきた。考え方を変えていかなければならない。

久保田)買取制度は都市公園ではできないことになっていることが課題だ。規制緩和はすすんでいるが。でもそれでできない、ということではなく、情報共有していきたい。水俣市の竹の活用についてお聞きしたい。事業化に向けて取り組み中だということだが。

宮本)チッソ株式会社といっしょに竹のバイオエタノール化の実験をしている。事業化には時間がかかる。市は竹の搬入を担っている。

久保田)本市も中山間地域で竹の問題が出ている。ぜひ今後も情報交換をさせていただきたい。対馬市はJ-VER制度に登録して売り上げは2000万円になるという話だった。本市の場合はそれだけ大きな規模の森林はないので羨ましい限りだ。

財部)森が二酸化炭素を吸収する。しかし森を放置すると吸収量は減ってくる。木3本のうち1本間伐すると、2本の方が吸収量は多いと言われている。また大きくなろうとするときに吸収量が増える。間伐して山を育てる、綺麗な山を創りだすこと、ヤマネコと共存できる山に戻すこと、二酸化炭素を多く吸収させることが重要だ。要は、環境がお金になる。二酸化炭素がみなさんの善意でお金に変わる。お金を出すことで、人生の帳尻合わせをしてもらいたい。そのために森を育て、教育していこうとしている。さきほど宇部市はできないと言われた。確かにどこでもできるということはないが、それをお互いやっていくことが大切であって、9割が山の我々が担うことはこれだよ、ということだと思う。

久保田)J-VER制度では一定の基準がある。できれば市内の排出量を市内で吸収したいとは考えたが基準に満たず断念した。その代わり、カーボンオフセットとして、例えば今日自動車でお越しの方にはワンコインを寄付していただき。その基金で森を守り育ててそれでチャラにするというやり方もある。楽しく、まちの特性にあった取り組みをしていけば変化の波が来るのではないかと期待している。

すぎ本)国内に1800の市区町村があるが、まちづくりをやっているかどうかで差が出てきている。友だちがいる自治体は、ここはできない方いっしょにやろう、代わりにここを担う、ということができる。お互いの特性を生かしてサポートしあえる関係を創りだしていければと考えている。次回には具体的にこんなところでできる、という話をしたい。

【テーマ2】生物多様性保全のための戦略的な地域連携保全政策

プレゼンテーション
宮本)すべての命を大切にするまちづくり。市の面積の75%が森林。水を大切にすることが環境を大切にすることにつながる。あるもの探しとして、地域資源マップをつくった。水俣への誇りも醸成された。地区環境協定、住民自らが取り組み市がサポートする。山間部を中心に8地区で締結。村丸ごと博物館、4地区が指定されている。住民が学芸員として活躍している。田畑も大切にされる。実生の森では有機水銀の埋立地で種から木を育てている。海藻の森では地元の漁師が中心となり藻場の育成をしている。体験型環境学習では地域住民も一緒に取り組む。本市では水系がひとつの地域に収まっている。水系を図に示すと樹形図のようになる。川の樹を守っていくことが努めだ。

財部)本紙に生息する生物は多様すぎるほど。しかしツシマヤマネコは推定80〜110頭と言われる。生態系のダイヤモンドが崩れかけている。2010年に愛知県で開かれたCOP10ではスピーカーとして参加した。愛知ターゲットでは海についてもふれられている。環境基本計画では海洋保護区設定を規定した。このままでは魚がとれなくなる。しかし消費者が高くても買わなければいけない。収奪的漁法が横行している。EEZ境界線は国の管轄で12海里。領海は3海里しかない。9海里は船の通路などで使えない。だったら保護区にしてくれと言っている。

久保田)宇部市は石炭から発展したまち。国の補助で地域連携保全活動計画(区域計画)の策定をすすめている。これまでは単発でいろいろやってきたが計画的につなげていかなければならない。計画書が次の世代への贈り物になると考えている。生物多様性地域戦略(市全域戦略)の策定にも取り組んでいる。生物多様性が産業としても守られる必要がある。

ディスカッション
すぎ本)森、海という共通点。人間による大量絶滅の時代。3自治体で相互交流できないか。ツアーと環境で共同できないか。

宮本)環境教育旅行。学校版ISO。子どもたちの交流ができないか。

久保田)子どもたちが行き交えるプランの交換ができればいい。

財部)費用対効果という点でも子どもがいい。国は定量的な効果を出せ、という。無理だ。心は定性的にしか評価できないところもある。いまのままではだめ。違う価値観を認め合えるように外と交流するための投資をしていきたい。

すぎ本)ドイツの環境首都に共通していることは「人づくり」。まちを大切にしようという人をどう育てるかがポイント。今日の参加者にも参加していただいて、今日を機会に交流の仕組みづくりをはじめられないか。

久保田)水俣にはプランニングを担うNPOがある。対馬、宇部にはない。ノウハウを提供していただくことは可能か。

すぎ本)日本を地域から変えていこうという自治体は日本に数十あると考えている。今日のような取り組みを全国で開催していって、地域を超えて助け合える体制をつくっていきたいと考えている。ぜひご支援いただきたい。

質疑
久保田)環境、福祉、芸術を総合化させた公園にしたい。ハンディキャップのある方の働く場としてふさわしいところにしていきたい。そして緑と花の面積を二倍にしたい。再生可能エネルギー、動物園のリニューアルもその計画のなかに組み込まれている。

宮本)水俣の個性、命を大切にするまちづくり。「もやい直し」に取り組んできた。やっと笑顔が見えてきた。今後もがんばっていく。

財部)2年前から公的資金を5千万円投入して林業従事者を20名増やした。いまのところだれも辞めていない。親の価値観で子供の将来を決めてきたが、これからは木こりで食っていけるようにしたい。昨年から韓国にも木材の輸出を始めた。それが収入になる。

共同宣言・署名

〜地域から持続可能な社会をつくる〜
中国・九州地区 環境先進自治体首長サミット参加都市の共同声明

わたしたち、熊本県水俣市、長崎県対馬市、山口県宇部市の3市は、本日、宇部市において、中国・九州地区環境先進自治体首長サミットを開催しました。

ここに集まった3市は、市民とともに率先して
環境問題に取り組んできました。そして、わたしたちの住む地球を
今よりも良い環境で次世代に引き継ぎたいと考えています。

わたしたちは、環境先進自治体としての誇りと責任のもと、
互いに連携と交流をすすめるとともに、本日議論し、認識を深めた、
低エネルギー都市実現及び生物多様性保全のための政策を推進し、
地域から持続可能な社会づくりに取り組むことを表明します。

そのスタートとして、子どもたちのためのスタディーツアーを企画交流すること。
2012年7月24日

水俣市長 宮本勝彬
対馬市長 財部能成
宇部市長 久保田后子

参加市の紹介

【熊本県 水俣市】
水俣市は世界に類例のない公害を経験したまちです。しかしながら、この厳しい経験を貴重な教訓として、命と環境を大切にする取り組みを市民と協働で懸命に進めています。
平成4年に日本で初めての「環境モデル都市づくり宣言」を行い、ごみの高度分別や水俣独自の環境ISO制度など、市民と協働で様々な環境政策に取り組んできました。昨年7月、これまでの実績と今後の取り組みの提案が評価され、国の環境モデル都市(全国13都市)に認定されるとともに、環境首都コンテスト全国ネットワークが審査する「〜持続可能な地域社会をつくる〜日本の環境首都コンテスト第10回」において、2011年(平成23年)3月に全国初となる日本唯一の「環境首都」の称号を獲得しました。これからも、大自然の恵みを大切にして、環境と産業が両立する持続可能な豊かなまちを目指します。

【長崎県 対馬市】
対馬市の豊かな自然には、国の天然記念物のツシマヤマネコをはじめ、対馬でしか見ることのできない生物や、朝鮮半島などの大陸系の動植物が多く生息しています。また、渡り鳥の中継地であることから、世界でも有数の野鳥の観察地になっています。上県町には、これらの野生生物の保護・研究を行う場所として対馬野生生物保護センターが設置されています。市では、人とツシマヤマネコをはじめとする野生動植物との共生を目指し、環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくため、「循環型社会の構築に努め、現在及び将来の市民に良好な環境を継承していくこと」などを基本理念とする「対馬市環境基本条例」を制定しました。平成24年度においては、本条例に基づき環境の保全及び創造に関する「目標」や「総合的な施策の方針」などを定める「対馬市環境基本計画」を策定することとしています。

【山口県 宇部市】
宇部市は、戦災により市街地の大半を焼失したものの、再建にかける市民の熱意と石炭景気に支えられ、戦後順調な復興を遂げましたが、産業の発展とともに企業の石炭使用量が増加し、ばいじん汚染が大きな問題となりました。1951年(昭和26年)には、全国に先駆けて、条例に基づいた「産・官・学・民」からなる「宇部市ばいじん対策委員会」を設置し、相互信頼と協調の精神をもって、話し合いによる、全市民が一体となった「宇部方式」といわれる独自の公害対策の取り組みを積極的に展開し、ばいじん汚染の克服に努めました。この「宇部方式」による環境の保護・改善対策の手法が諸外国においても広く活用できるものとして国際的に高く評価され、1997年6月、本市は国連環境計画(UNEP)から「グローバル500賞」を受賞しました。この受賞を機に宇部方式の手法を海外へ伝えることが本市の役目だと考え国際環境協力をスタートさせました。
宇部市は、グローバル500賞受賞都市として、産・官・学・民が協働して、地球規模での環境問題や循環型社会の構築など「豊かな自然と住みよい環境をはぐくみ、持続可能な社会をめざすまち」を望ましい環境像として幅広く取り組んでいます。

【環境首都創造NGO全国ネットワーク】
2001〜2010年度まで「日本の環境首都コンテスト」など国内の自治体を対象とした全国的活動を展開してきた環境首都コンテスト全国ネットワークを前身とし、その活動成果を引き継ぎ、発展させて地域からの持続可能な社会創造に自治体と協働で取り組むために2011年1月に発足したNGOのネットワークです。現在、環境首都創造自治体全国フォーラムの開催やセクターの壁を超えた地域公共人材の育成・流動化の仕組みづくり、国内自治体の環境ベストプラクティスデータベースの構築、NGOと自治体の戦略的協働ネットワークの立ち上げなどに取り組んでいます。

独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて製作しました
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