第13回 ゴスラー市の「ローカルアジェンダ21」 

2年以上かけ議論 多彩なプロジェクト
市民が主体的に活動展開

「ローカルアジェンダ21(LA21)」という言葉をお聞きになったことがあるだろうか。

1992年ブラジルで開かれた「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」で、地球規模で持続可能な開発を実現するための行動計画「アジェンダ21」が採択された。「アジェンダ」には「課題」といった意味があり、訳せば「二一世紀へ向けた地球の課題」といった具合になる。

持続可能社会 各地で試み

その第28章に「持続可能な社会・開発の問題と解決策の多くが地域の活動に根ざしており、住民参加が持続可能な社会をづくりの決定的な要素であるから、各国の地方自治体は住民と協議し、LA21に関して合意形成を図るべし」との旨の一文がある。つまり、地球規模で持続可能な社会を実現するために、行政と住民のパートナーシップ(協働)に基づく、地域課題の解決に向けた行動計画とその推進体制を持つべきとしている。

これを受け、世界各地でLA21に基づいた試みが行われている。日本でも、例えば京都市の「京のアジェンダ21フォーラム」、大津市の「おおつ環境フォーラム」といったアジェンダ組織がある。具体的な活動プロジェクトの数々については次週紹介することとし、今回はゴスラー注1)のアジェンダ組織の経緯と現状について紹介したい。

誕生は、ゴスラーにもLA21をつくるべきとの決議が市議会でなされた1997年にさかのぼる。この年の暮れ、市民、研究者、政治家、事業者など100人近くが参加し、市民参画による策定がスタートした。環境だけでなく経済や社会の問題も含めて2年以上議論した末にLA21が完成、それを推進するアジェンダ組織も立ち上がった。


アジェンダ組織の市民メンバーたち。視察のほとんどに同行し、詳しい案内をしてくれた

低い認知度 予算不足悩む

言うまでもなく、行政と住民のパートナーシップという理念に基づいた組織だ。現在はゴスラー市環境保護部に勤務するヴォルフガング・レプツィーン氏が事務局を担当し、熱心で主体的な市民メンバーたちとさまざまな活動プロジェクトを展開している。


アジェンダ21行動計画書の表紙をかたどった宣伝パネル。下部には「小さなところから世界を変える」という一文

彼らが置かれている状況はある意味、日本とよく似ている。彼らが口にしていた「一般市民はもちろん、行政や議会の間でもまだ認知度が低い」「活動予算が乏しい」「活動メンバーが固定化傾向にある」といった悩みは、日本のアジェンダ組織の多くにそのまま当てはまる。ちなみに私たちは、ゴスラーのLA21を視察に訪れた最初の日本人だったそうで、市長も参加してレセプションを開いていただいた。

自分たちの存在は地球の裏側に住む人間にも伝わっているのだと分かり、今回の訪問は彼らにとって大きな励みになっていた様子であった。と同時に、視察を終えるにあたって、今後の交流の継続を約束できたことは、私たちにとっても大きな財産になった。

ところでここ数年「環境先進国」ドイツの各地自治体へ日本人の視察が相次いでいる。しかし「昼食は何々ビールが飲めるレストランでなければいやだ」と駄々をこねたり、視察時間中にもかかわらず携帯電話で話し込むなど、一部の視察者のマナーが問題になっているとも聞く。これは、持続可能な地域社会づくりうんぬんを語る以前の問題だろう。

(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター・宮永健太郎)
注1)ゴスラー市

 ドイツ北部ニーダーザクセン州にある人口約46,000人の都市。第2回持続可能な都市コンテストで、ローカルアジェンダ21の取り組みで特別賞を受賞した。毎年4月30日夜には魔女に仮装した人たちがドイツ各地から集まり、春の訪れを祝う「ヴァルプルギスの夜」が催される。

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